なぜ夫は何もしないのかなぜ妻は理由もなく怒るのか
我が夫婦は結婚して10年以上が経った。どこのカップルもそうだと思うが、最初の頃は、それこそ毎日が「ドキドキルンルン」なのである。ほとんど忘れたけど…。
しかし、その頃自分の周りを見回してみると、絵に描いたような〝おしどり夫婦〟は意外にも目に付かないことに気付いた。
はっきり言えば、パートナーの愚痴ばかりだったり、ややもすると悪口ばかり吐き捨てるような、それも、かなり酷い単語を使いながらまくし立てるような人まで、中には居らっしゃるということが、ある意味新鮮ではあった。
「かわいそうに。うちは何年経ってもラブラブ続行決定済みなんだけどなぁ…」
今にして思えば、もちろん僕の頭の中こそが絵空事に満たされていた。正常な思考力を発揮するための冷静さが、完全に抜け落ちていたと言える。うちだけが、特別に誂えられた〝神様お墨付きカップル〟という訳ではなかった。要は普通であることが年数とともに判明した。
だからたまには喧嘩だってする。幸いにも、これまで修復不能なほどの大惨事に至ったことはない。しかし、もっとも恐ろしいのは、「大惨事じゃない」と思っているのは僕の方だけじゃないか?ということだ。
世の〝夫たち〟に大警鐘を鳴らす、とっても勉強になる本を、ここに紹介しておきたい。もちろん夫に向けてだけではない。妻には、夫の生態を知る上で、参考にすべき文言が散りばめられているので、必見だ。
円満夫婦にも忍び寄る危機
裏表紙をめくると、カバーのところに「このような夫にオススメです」とある。
- 妻がなぜ不機嫌なのかわからない
- 妻からの小言が苦痛でしょうがない
- 妻が恐いので帰宅したくない
- 妻と子供の教育のことでぶつかる
- 妻が実家に帰ってしまった
- 妻から「離婚してほしい」と言われた
- 「うちは問題ない」と思っている
- 老後も妻と一緒に生活したい
僕の場合、この8個のチェック項目のうち、なんと6個が当てはまった。
実家に帰ったまま戻ってこないこともないし、離婚をほのめかさられたこともない。多分ない…。それだけだ。
普通に捉えたら、かなりの危機的状況だ。マジか?
ちなみに、表紙の裏には同じように「このような妻にオススメです」も書いてある。
- 夫と一緒にいるとイライラする
- 夫がしてほしいことをしてくれない
- 夫がなかなか話を聞きてくれない
- 夫にも家事・育児をしてもらいたい
- 夫の借金グセや無駄遣いが気になる
- 嫁姑問題で夫が助けてくれない
- 夫の親の介護のことで悩んでいる
- 夫と一緒に生きていく自信がない
正直に言うと、聞き流してしまうかも知れない項目ばかりだ。それほどピンとこない。
でもこういった問題は、自分の主張ばかり「そうだそうだ」と高らかに唱えるところに、すれ違いが生じているに違いない。概してそんなもんだ。
自分だってそう思われている公算が極めて高いことを、まずは素直に受け入れた方が良さそうだ。
「一緒にいるとイライラする!」と、面と向かって言われたことがないだけ、マシなのだ。
目の前に居るのは自分とは別の生き物
夫婦とはいえ、元は他人である。生まれも境遇も違えば、同じ事象でもその捉え方は全く違うこともある。おまけに男と女だ。ハナから〝別の生き物〟と思っておいた方が無難な場合だってある。
この本では、その「食い違い」を的確に、ちょっとクスッと、38の例として言い表している。
中でも僕が気になったのは、「疲れている時、夫は黙ってほしい、妻は気づいてほしい。」日常の買い物でも、「夫は目的があるから買いに行くが、妻は目的がなくても買いに行く。」少し家事を手伝うくらいはした方が良いだろうから、「夫は教えてほしい、妻は自分で考えてほしい。」仲直りの際には、「夫は自分は悪くないと思っていても謝るが、妻は自分は悪くないと思っているから謝らない。」等々。
これだけで、「分かる分かる…。」こんなにも僕の思いを理解してくれる人が、ここに居た!と、溜飲が下がる思いなのだ。
しかし、何度も言うが、目の前のパートナーは自分とは別の生き物だ。まともにぶつかったって、埒が明かない。ここは一つ高みに立って、俯瞰する余裕を持とう。でも、同時に気を付けた方が良いだろう。相手にそれを悟られては、「偉そうにしている、バカにしている」と更なる地雷に触れる危険を孕んでいるかも…。
円滑な意思疎通は言葉がけから
僕は普段から、妻に向かって歯の浮くようなことでも冗談めかして言うことはある。だから、労いの言葉をかけるなんて、「そんなこと出来るかい!」と、取りつく島もない昭和ひと桁世代とは決定的に違うと思っている。それでも「そこまで言わんでも…」と思うことはあるし、言ったとしても、そこはかとなくピントがズレていることもあるかも知れない。そこで、相手の言うことを頭ごなしに否定せず、共感する、というのを意識して過ごしてみた。
その程度では、目立って何かが変わったという実感はないが、妻を空気のような存在として捉えるのではなく、しっかりと見よう、つまり観察しようという意識が強くなったことは確かだ。
そのおかげかどうか、このところ言い争うことも少ないし、とても良い傾向だと実感できている。
感情はあらゆる原動力となり得るので、とても大切にすべきだが、理論武装だって大切だ。相手は何を求めるのか、どんな風な感じ方をする人なのかを知るのは、何も自分を曲げることを前提としての話ではない。円満に暮らすという共通の大義名分があるではないか。
適度に肩の力を抜きましょう
夫婦は、人間関係の一番基本で、家族の幹だ。そこは強固で安定した方が良いと、誰もが考えるだろう。その通りだが、ガチガチに崇高な理想を掲げては、却ってギクシャクする。実は「そこそこいい夫婦」が一番なのだ。男と女の違いを認識して、自分の考えや行動を意識的に変えることで、いとも簡単に円満になれるなら、そちらを選択することには、何のためらいも無かろう。勝ち負けの問題ではないのだ。
これからもまた何度も喧嘩して、いや〜な雰囲気になることもあるだろう。でもこの本に立ち返って、また気持ちを新たに実行・継続していきたい。夫婦が共に成長していくことを、目指していこうと思う。
実例満載で説得力ハンパなし
著者の高草木陽光さんは、夫婦問題カウンセラーとして、これまで7000件もの事例に向き合ってこられた方だ。その実例に沿って書かれたこの本なので、とても身近で分かりやすく、共感できる部分が多い。
上手くいかないことが起きると、どうしても気持ちが俯きがちになることが多いものだが、そんなことはない、必ず光の射す方はあるし、意外に些細なことがその原因になっているかも知れないことを気づかせてくれる、読み応えのある良書だと思う。ぜひ参考にすべきだろう。
そして未来へ
全6章のそれぞれの終わりに、「チェックリスト」があって、一つひとつが面白い。その中に「自分の自尊心を自分で満たす方法」というのがあって、これはつまり、自己啓発でもあることに気づく。
相手の自尊心を傷つけないことはもちろんだが、自分が自尊心であふれていることが、相手の満足感にも繋がるという考え方だ。
手を携えて補い合いながら進むのではなく、別々に歩いているけれども、目指すところは同じというか、そんなイメージの夫婦像も有りなのかな?と考えさせられもする。
いずれにせよ、「夫婦の将来に幸あれ」と強く願う次第なのである。
森下昌彦(えむもりさん)
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