「アドラー」の名前くらいは知っている。でも、本屋には関連本が「ズラーッ」と並んでいるし、何冊か手に取ってチラチラ見るだけ。それだけで読んだ気になったりもするから、ちょっと時間の無駄気味。
そんな中、「超入門」と書かれたアドラー本が目に付いた。
「これ、絵も多いし読みやすそう」という、小学生みたいな理由でパラパラと読み始めたが、内容的には〝深〜い〟ことにすぐ気付く。そして、明るい気持ちに満たされる。これは、十分に読む価値あり。
早速、紹介しよう。
悩みが消える 「勇気」の心理学 アドラー超入門
この本の著者の、永藤かおるさん。かつては「職場で疎外感を感じる」、「心から打ち解けて話せる友人がいない」、「人と一緒にいるときに心から笑えない」と悩んでおられたそうだ。
そういう状況の方は多いだろうと想像できる。でも、ひとことで言ってしまえるなら、それは「悩む」という行動を、自分で選択したに過ぎない。その感情でもって受け止めることを、どこかの時点で決めたのだ。自分でそうしたのだ。
「勇気」は悩みを乗り越えるツール
この本に幾度となく出てくる言葉に、『勇気とは「困難を克服する活力」』というのがある。この本のメインフレーズと言っても良い。
勇気があれば、「自分の能力に確信を持てる」、「自立心旺盛になる」、「自分の感情をコントロールしやすくなる」、「将来に対して楽観的」、「他者と協力的でいられる」という、エネルギーに満ちた状態でいられる。なるほど、イメージしやすい。その通りだろう。
人間の悩みはすべて対人関係である
一方でアドラーは、「人間の悩みはすべて対人関係である」とも言っている。「悩み=人間関係」なら、勇気付けして、人間関係を良好に保つことで、悩みが無くなり、そのコミュニティーに幸せが満ち溢れるはずだ。
勇気づけするためには、自分自身が勇気に満たされていることが大切なわけだが、それらは相関関係にあるので、つべこべ言わずに人を勇気づけることを意識してみることにする。「勇気づける」と言うよりも、「勇気をくじくのを止める」、に重きを置いた方が良いかも知れない。
つまり、「恐怖による動機付けをしない」、「プラス思考でいる」、「失敗の原因を過去に求めない(あれが原因で失敗した)」、「聞き上手でいる」、「重箱の隅をつつかない」、「皮肉っぽくならない」といったところに注意すれば、自分も「勇気づける人」に変われるのだ。
勇気づける人と、勇気づけられる人の相乗効果による、上昇スパイラルとでも言おうか。
共同体が幸せに満たされる
また、「共同体への貢献感は幸福の尺度で、最も確かなもの」という言葉は、深い上に「ズドーン」と響く。
精神的であり宗教チックでもあるが、生まれて、そして何のために生きているのかという根源的な疑問に対する、1つの解がこれではないだろうか?
そりゃ、誰もが色々な欲にまみれている。それらをすべて超越したところに、貢献する喜び、誰かが自分を待ってくれている、という思いがあるように感じる。
まずはもちろん家族から
手始めというか、もう10年以上前から目指していることだが、まずは我が家を世界一の仲良し家族にしてみるのだ。
お互いがリスペクトしあって、勇気づけし合える関係を作って見たい。「もっともっと大人にならなければいけない」と思ってきたが、「大人になる」とは具体的にどういうことなのかのヒントが、ここにあるように感じる。
ぐっと飲み込んで我慢すればいいわけではない。自分の感情をコントロールすることを決断するのだ。愛情を持って、「勇気づける」のだ。
家族でなくても同じことが言える。豊かな共同体感覚で、幸せを満ち溢れさせてみるのだ。
勇気づけが良い人間関係を生む。仲間への貢献感が上昇して悩みなんて、概念さへも吹っ飛んでしまいそうだ。
まとめ
そもそも、僕がアドラーのどの部分に魅せられたのかというと、「過去は関係ない。未来を動かすのは、自分自身の今の行動だけ。」というスタンスであることに他ならない。
どうにも動かせない過去の事実を引っ張ってきて、「これが原因です!」と突き付けられても、何が出来ると言うのか。
それを思うと、アドラーのこの基本的なスタンスこそが、僕を元気にしてくれる「勇気づけ」であることが分かる。
「ちょっとイライラしてるかな?」、「最近疲れているかも?」と感じた時、また読み返してみるべき良書だと思う。
森下昌彦(えむもりさん)
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