甚大な被害をもたらす結果となってしまった、「平成30年北海道胆振東部地震」であるが、地震国日本に住む以上、この種の災害を避けて通ることができない宿命にある我々には、そうだからこその〝心構え〟が必要である。
防災と、迅速な復旧のために出来ることは、そう多くないと感じるのが僕の意見だが、それが「達観」なのか「鈍感」なのかは、読者の主観で判断してもらいたい。
天災に立ち向かう?
台風や大雨なら、早く逃げるのが一番有効な安全策だろう。しかし、地震ならそうはいかない。
せいぜいタンスを固定するくらいか。確かに予防ではあるが、効果の程については、何とも頼りない印象を持ってしまう。
激烈な揺れの中では、「とにかく身を守る」しかない。残念ながら命を落とされる方も出る。理不尽な死を否応なく突き付けられるゆえの「天災」なのだ。
「危機管理」と言うけれど…
危機管理の「危機」とは、日常から引き離された状態のことで、そこから日常にどうやって戻していくのかという話なのだ。
多くの現代人にとっての「日常」とは、一番にインフラが整っているということに尽きる。
それなら、幸運にも命を失わずに済んだ人については、もう何もする事がない、とは言えないか?
何故なら、電気や水道を復旧させる仕事をする人以外は、待つこと以外に何も出来ないからだ。
多分ほとんどの人には必要なかった
テレビによると、地震発生直後から札幌市街の商店で、食料や水を求める人の列が長く伸びたらしい。
僅かな量を買うのに、3時間以上も並んでいるという事態が起きた。
対して、阪神大震災の時は、多くのビルが崩壊して辺りが火の海になるという事が起きている。
「電気だ水道だ」と言っている場合じゃないことくらい、誰にでもすぐ分かった。
つまり、「地震=食料確保」と単純に刷り込まれた人がコンビニに走ったわけで、冷静な判断が出来なかった点で、この人たちは、「情報弱者」のレッテルを貼られても仕方ない。
隣町に通じる唯一の道路が崩れた訳ではない。大都市札幌にあって、見たところ壊滅状態という訳でもなさそうだ。何日にも渡って、ライフラインが寸断されるとは考えにくい。
この時点で必要なのは、「水を買いに行かなきゃ」ではなく、必要な所へ必要な物資を流す。つまり、「何もせず待つ」である。
実際、当初「北海道全土295万件が停電した!」と大騒ぎになったものの、地震翌日にはその数が半分になり、2日後には僅か0.13%の、4,000件にまで減っている。
水道の場合は、やや遅れてはいるものの、地震発生2週間後時点で、特に被害が大きかった厚真町・安平町で1,000件程度の断水が続いている。
今なお苦しんでおられる方には失礼な話で、あの時慌ててコンビニに並んだ人たちは、多分当時の不便さを忘れかけているだろう。
同調圧力
日本人にありがちな、「みんなと同じだと安心」という心理が働いている。「同調圧力」というヤツだ。
しかし、決して日本人特有でもないという事例もある。
9.11の後、アメリカでは飛行機に乗る人が一次的に激減したが、代わりに自動車でやたら長距離を移動する人が増えた。
言うまでもなく、最も安全な交通機関は飛行機である。飛行機事故と自動車事故の件数が、何桁も違うことくらい誰でも知っているが、あまりに衝撃的な事件に遭遇すると、人間は冷静な判断力を失いがちだ。結果として大勢に流されることになる。
人とは違うという価値
いま一度問いたい。人の価値は、「その他大勢とはどこか違う」というところに有る。
決して、人と反対のことばかりしていれば良い訳ではないだろうが、冷静な判断の結果が、いつも大多数の側に付いているとしたら、ちょっと危機感を持つべきかも知れない。だって、正に「没個性」ではないか。
経験が生かされていない
要するに、経験を踏まえて次回に生かす事が大切なのだ。「フィードバック」である。
僕の住む大阪に、今年2個目の台風が迫っている。暴風が吹き荒れて大きな被害が出た前回同様の、大荒れの予報が出ている。
幸いにして、台風の通過スピードが速いために、3~4時間を耐え凌げば何とかなりそうで、最小の被害であってほしいと願っている。
その〝台風接近前日〟の今日、スーパーの食品売り場は、品物が「スッカラカン」だったそうだ。
僅か数時間の台風通過中に食べるものを調達するよりも、飛んでしまいそうな物がないか、家の周りの点検をしておくとか、僕ならそっちの方が大切だと感じるのだ。
森下昌彦(えむもりさん)
最新記事 by 森下昌彦(えむもりさん) (全て見る)
- 「この曲は現在、この国または地域で入手できません」ってなんだ? 〜iPhoneで音楽が聴けない時の対処法〜 - 2022年1月23日
- ドイツ人はなぜ「自己肯定感」が高いのか 〜ドイツ車に乗ってもドイツ人の様にはなれなかった僕が今思うこと - 2022年1月16日
- 年賀状作りはオワコンなのに、僕がそれをやめない理由 - 2022年1月8日